村上富朗さん 「木の椅子百脚」展。
今日は東御市で一日かぎりで開催された
村上富朗さんの「木の椅子百脚」展へ。
村上さんは御代田町の浅間山山麓にある工房で
ウィンザーチェアやシェーカー家具づくりに取り組まれてた
現代日本を代表する木工作家。
会場には、村上さんがこれまで作ってきた椅子たちの中から
100脚以上が集められ、工房での制作風景をうつした写真と
ともに展示されていました。
日本の住宅建築の巨匠、吉村順三さんの仕事にも
携われていた村上さん。
27歳のころにアメリカンウィンザーチェアの魅力に魅せられ、
以来30有余年、作られてきた椅子は何百脚にも及ぶそうです。
会場には、村上さんとともに仕事をされ、長年親交の深い
建築家の中村好文さんや工芸家の三谷龍二さん、
雑誌「考える人」の編集長もされていた編集者の松家仁之さんが
ゲスト対談。村上さんとの長年のエピソードをお話しされました。
木工職人の四代目として育ち、幼少のころ気づけば
かんなくずの中で遊ばれていたこと、
国内だけでなくアメリカの工房でも家具づくりに従事する中で、
その素晴らしい技は今なお海外の作家からも賞賛されていること。
職人としてコツコツと制作に励みながらも
お酒や音楽が大好きで、その朴訥とした人柄で
多くの人から愛されていること。
一つひとつのお話が楽しく、
とてもあたたかい空気が会場を包み込んでいました。
そして今日の展覧会、実は企画自体がスタートしたのは
ほんの一ヶ月あまり前のこと。
通常では考えられないほど短い準備期間の中で、これほどの
魅力的な会が実現したのは、村上さんとともに家具づくりに
携わってきた長野県の木工作家の皆さんの協力の賜物でした。
企画スタート直後から、どんな展示にするのか、また
村上さんの手元から多くの方の元へ“お嫁入り”していた
椅子たちの所在リストをつくり、展覧会のために一日だけ
お借りする許可を取り付けていく――。
木工作家仲間の皆さんのネットワークの中で、
連日連夜メールや電話で連絡を取り合いながら、今日という日を
迎えたのだそうです。
後半のゲスト対談では、今回の展覧会を中心メンバーとして
企画された谷進一郎さんや、高橋三太郎さん、須田賢司さん、
東京国立近代美術館の諸山正則さんが
木工作家から見た村上さんの仕事ぶりを語られました。
壇上に上がった方々だけでなく、今日の展覧会のために
奔走した多くの木工作家の皆さんが、仕事仲間でもあり、
強い絆で結ばれた親しい友人でもあるのだと感じました。
子どものころ両親に連れられ村上さんの工房へ遊びにいったこと。
村上さんが中村好文さんと一緒に作った
ツリーハウスにのぼらせてもらったこと。
かんなくずの中にいるカブトムシの幼虫をもらったこと。
展覧会場を歩きながら、本当に多くの思い出が浮かんできます。
そんな大切な親戚のおじさんのように感じてきた村上さんが、
一人の木工作家として、どれだけ素晴らしい作品を生み出し、
どれほど多くの人たちに愛されているのかを感じました。
今は病気の治療に取り組まれている村上さん。
早く良くなって、これからも素晴らしい椅子をつくり続けて欲しい。
心からそう祈っています。
by thinking_grove
| 2011-06-19 08:00
| 雑記