かたちをつくる歴史。

d0108212_2050529.jpg


七月十九日。
朝から北信濃へ向かう。

上信越道を長野ICで下り、19号線を白馬方面へ。
道沿いに流れる犀川の水面は濁り、水かさを増し、
数日前まで続いていた雨の名残を感じさせる。

いくつかのトンネルを過ぎ、
中条村にさしかかる辺りで、遠く視界の先に
まだ冠雪を残したアルプスが見えてくる。

谷間の道から山の傾斜地に点在する家々を眺めながら
集落の中を走る内に、今日の目的地である小川村にたどり着く。
御代田を出てから二時間の道。

梅雨明けの空の下で
小川神社の境内では盛大に蝉達が鳴いている。



d0108212_2050476.jpg


「信州の自然百選」にも選ばれるここ小川村は、
1,000mを超える山々に囲まれた自然豊かな場所。
山に溢れる湧き水はいくつもの川となり、
やがて集まって犀川として長野市へ流れていく。

信州名物の「おやき」でも有名な小川村。
素朴な土地柄で、人のつながりが今でもあたたかい。


この日は普段からお世話になっている
美登利屋さんの手がけた建物の撮影に伺った。

この地域きっての老舗工務店である同社は
大正七年創業以来、現当主である望さんで三代目。
「これまでの歴史をまとめた本をつくろう」という望さんの声から
始まった取材。ここ二年くらいの間に様々な建物を観て、
多くの人たちの話を聞いてきた。

その中でも、美登利屋さんを考える上での出発点が、小川神社。

小川村の代表的な建築物でり、昭和二十年代に手がけられた
同社の代表的建築の一つ。
決して大きな建築ではないけれど、きれいなプロポーションや
拝殿の彫り物はどれだけ眺めていても飽きることがない。

小川神社に続いて、昭和半ばに建てられたという個人住宅を訪ねた後、
村でも少し山の上の方に位置する法蔵寺へ向かう。


d0108212_2050413.jpg


ここも、何とも素晴らしい場所。
たくさんの人の想いが詰まった建物はちょうど小川の街を
見下ろす場所にあった。
建築したときは材木を運んだりでさぞ大変だったのでは、とお聞きすると、
「昔はみんな、こういうのが当たり前だったんだよ」と
笑顔で返される。

う〜ん、なんだかすごいことだ。
効率性や省コスト化が求められる現代とはやっぱり
かけている労力も時間も違うのかもしれない。それに、
公共の建物を作るときの人々の感覚そのものも今とは
異なるんだろうなあと思う。

法蔵寺のあと、小川から長野市に下り、神社と個人の方の
お住まいを拝見し、最後は同社のモデルハウスへ伺った。



d0108212_20443471.jpg


モデルハウスへお邪魔するのはもう何度めかになるけれど、
家づくりに取り組む人の、その背景である「歴史」の部分を
観てからまたあらためて現代の作品を眺めると、
その見え方が少し変わっている。

それは、
「様々な時代を“建築”という一つの仕事を通して
  親から子へと受け継ぎ、歩いてきたからこそ、こうなったのか…」という気づき。
変化する時代の中で、現在の同社の姿勢がどう形作られてきたのかを、
そのルーツと歴史を辿ることで少しずつ観てきたという感覚。

建築や人も、
出来上がってしまえば一つの形だけど、
その背景を探る中で、「歴史」がかたちづくってきたものの
尊さを、今あらためて感じるのです。
[PR]
by thinking_grove | 2010-07-24 17:50 | 長野


生活と絵


by thinking_grove

プロフィールを見る
画像一覧

日々の生活の中で、観ることや感じること、そして絵のことを中心に。

伊藤夕歩

●HP
Thinking Grove


CERAMIC STUDIO FUSHA

以前の記事

2016年 08月
2012年 03月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
more...

カテゴリ

全体
スケッチ
散歩
雑記
長野
東京

検索

人気ジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧