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霊泉寺の夕暮れ (2)

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広場に車をとめて歩くと、すぐに集落の入口に霊泉寺が見えてくる。
境内の手前に鐘楼、奥に本道が鎮座している。

古刹霊泉禅寺は、謡曲「紅葉狩」に登場する平維盛が、
戸隠の鬼女紅葉を退治したあとの帰り道で立ち寄ったこの地の
湯で傷を癒し、寺を建て霊泉寺と名付けたと伝えられている。

ただ建立の年代については、968年(安和元年)とする説や、
1278年(弘安元年)とする説など、複数存在するらしい。
というのも明治10年に、霊泉寺は火事で一度ほぼ全焼し、
歴史についての書物がなくなっているそう。



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いずれにしても、木々に囲まれた本堂はとてもきれいだった。

白壁と曲線がいかされた窓、大屋根。
土地をふくめた建築としてのかたちが美しい。


境内で「霊泉寺大欅(けやき)」という看板を見つけた。
「幹の太さ約9.4メートル、樹の高さ約35メートル……」との記述を読み、
さぞや立派な姿ではと、にわかにドキドキしながら辺りを見るのだけれど、
それらしきものが見当たらない。

どうしてだろうと思いながら階段を降りた所で、その樹があった。


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きっと何かの原因で倒れてしまったのだろう。
石垣の上まで力強く張り出した根、幹だけが残っていた。

七百年を超える時を生き抜いた巨樹。
倒れる前の姿の勇壮さはいかばかりであったのか。
想像しながら、何よりもその樹のスケールに圧倒されてしまう。

長い時を生き、土地に根づいた巨樹を見ると、
それが放つオーラに強い感動を覚える。
樹木なのだけれど、何か別の生き物のような、
人のように考えたり話したりできる力を持っているような、
そんな存在に感じられる。

できることなら、倒れる前の葉を茂らせた大欅に会ってみたかったけれど、
その根、幹を間近に見れただけでもここに足を運んだ甲斐があった。



それから霊泉寺境内を離れて、町の中を川上方向へふたたび歩く。

道沿いに立ち並ぶ旅館や共同浴場を眺めながら、
その建物、町並みの雰囲気に時代を見る。
この土地が長い歴史の中に存在しているのだとあらためて感じる。


集落を抜け、人家も少しずつまばらになってきた辺りにも、
不思議な存在感を持つものがあちこちにあった。

農具置き場のような小屋、小さな祠、古い橋。
何の変哲もないようでいて、目が引きつけられてしまう。

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それらを眺めながら歩いているだけで、楽しくて仕方がない。

何気なく残ってきたものや、住んでいる人々の生活の中で生まれてきた
ものが持つ独特な力を感じました。


辺りを見て歩きながら、ふと昨年の夏に訪れた
群馬の中之条ビエンナーレを思い出しました。

町のあちこちに設置されたアートやオブジェたち。
映画の撮影地でもあった中之条が、
アートと出会うことで更なる「場としての力」を持ち、
多くの人を引きつける魅力を持った夏―。


霊泉寺の温泉街と中之条では、環境も人の動きもあまりにも違うけれど、
人が寄り付きにくい山間の集落の持つ「場」としての力、歴史、
流れる川がそう思わせたのかもしれません。

松本からの帰り道でフラリ立ち寄った霊泉寺の夕暮れは、
思いがけず、刺激的な夏の散歩となったのでした。

いつかまた温泉に入りながら、じっくりと霊泉寺を楽しみたいと思います。


- - - - -


帰宅してから、霊泉寺のことを調べてながら見つけた大欅の写真。
やっぱりすごい樹でした。


■霊泉寺大欅  ー上田市文化財マップー

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by thinking_grove | 2010-08-09 01:58 | 長野


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