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写真のちから。

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先日、東京は新宿のオペラシティーで開催されている
ホンマタカシさんの写真展
「ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー」に出かけました。

ホンマタカシさんといえば様々な雑誌で
写真を掲載され、絶大な人気を誇る写真家のお一人。
ここ最近では、冬に休刊となってしまった雑誌
「Coyote」の最後の一冊でも特集されていた方です。


写真の中に独特な空気感を表現される方…というイメージを
持っていたくらいでしたが、会場で写真を観て、
あっという間に引き込まれました。

会場の冒頭は、子ども達の日常を写した連作から
はじまります。
あどけない表情の奥に潜んでいる
強さや、深い思いのようなものが
一瞬の写真の中に切り取られていて、
写真によってはドキッとするような大人びた視線に
出合ったりするものも。

それぞれの写真が美しく、
子ども含めた人間の成長や、
日々の日常生活の大切さを思いました。


いろいろなテーマの作品がある中で、一番感動したのは
「Together: Wildlife Corridors in Los Angeles」という連作。
2006年ごろからホンマタカシさんが
映像作家のマイク・ミルズさんとともに
アメリカのロサンゼルス郊外に生息する野生動物の
生態調査に取り組まれていて、写真は動物の内、
特にマウンテンライオンの“視線”を追いかけ、
撮影されたものでした。

マウンテンライオンたちには生きるために
必要な“広さ”があり、その広さの中で狩猟に出たり、
子どもを育てていくそうです。
でも、郊外を縦横無尽に通るハイウェイにより
そのテリトリーは制限され、切り取られてしまう。

そういった状況を解決しようと、意思のある人たちによって
設けられたハイウェイの下のトンネル、“野生回廊”――。
撮影はマウンテンライオンたちに取り付けられた
GPS発信器のデータをもとに行われたそうです。

視線を追った写真というだけあり、
写真の中には一度たりともライオンは登場しない。
だけど、ライオンたちの視線の先には野生回廊があり、
生きていかなければいけない“環境”としての
都市の郊外の風景がある。

ホンマタカシさんが撮影した写真の横に添えられた
マイク・ミルズさんの文章を読みながら展示を観ていくと、
ライオンたちの心境や、彼らが常に人間の存在に
影響を受けながら生きていかなければいけないのだという
ことにまざまざと気づかされます。

僕たち人間が、
社会や生活の便利さを追求し続けているその裏側で、
どれだけ多くの生物がその影響を受けていたり、
生きていく上で理不尽としか言えないような
環境の変化を押し付けられているのだろうか……。


今までホンマタカシさんの写真の中に
感じていた空気感や存在感。
それらが一体どこから生まれてくるのかを
ほんの少し感じられたような、
そんな気がしました。
by thinking_grove | 2011-05-05 23:50 | 東京


生活と絵


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日々の生活の中で、観ることや感じること、そして絵のことを中心に。

伊藤夕歩

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